動詞「打ち込む」の多義的な意味の現れ方

Abstract

言語現象の分析においては、構造や意味関係を構成する要素の語彙的性質、文法的性質、そしてそれらの関係性を考慮する必要がある。また、単語の多義的性を考察する際、各語彙的な意味を個別に記述するのではなく、意味が現れる条件を実例に基づいて整理し、意味的タイプに分類することで、体系的な理解を深めることが可能である。本稿では、語彙的な意味、文法的な意味、そして両者をつなぐカテゴリカルな意味という概念を適用し、多義性が特に複雑な複合動詞「打ち込む」に焦点を当てた。その多義的な意味の現れ方を分析し、意味分類を試みた。分析は辞書記述および小説の用例に基づいて行った。分析の結果、「打ち込む」の多義的な意味は、大きく6つに分類できることが明らかとなった。これらは「叩いて内部に入れる」、「対象を相手の領域に移動させる」、「強く迫る、勢いよく押し寄せる」、「精神を集中する」、「球を打つ練習を十分にする」、および「敵陣に攻め込み、その勢力を二分する」といった意味である。特に、最初の3つの意味に関しては、さらに下位の意味的関係が確認された。これらの意味は、カテゴリカルな性質および文法的性質の変化に伴い、構造の変容を通じて新たな意味が現れる過程を示している。本稿は、語彙的な意な味、文法的な意味、カテゴリカルな意味という概念の適用、特定の構造における要素間の関係性を言語分析に含めることの重要性を示すものである。